ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました
「どうされました?」
返事はない。嫌な予感がして、受話器を置いてすぐに病室に向かった。
「失礼します!」
大部屋の仕切りカーテンを開けると、大村さんは胸を押さえてベッドに横たわっていた。
まるで死にかけの金魚のように、口を開けて喘いでいる。顔色は紫に変色しつつあった。
胸痛。呼吸困難。チアノーゼ。急変。そんな言葉が、頭の中を駆け巡る。
次の瞬間、壁のスタッフコールに手が伸びていた。
「誰か、血圧計持ってきてください! あと、ドクターコールお願いします!」
私がここを離れるわけにはいかない。
手で脈を測り、大村さんに声をかける。
「大村さーん。大村さーん」
肩に手をあて、大きな声で呼んでみるが、返事がない。聞こえていないというより、苦しくて返事ができないという感じだ。
「高場さん、大丈夫?」
血圧計と酸素マスクと回診車を持った主任が病室に来てくれた。
発見時の様子と脈拍を伝えると、主任が大村さんの腕につけた血圧計からエラー音が鳴った。
「血圧が下がってきている」
主任の言葉に、こっちの血圧が下がるような気がした。
大村さん、やっぱりそうとう胸が痛かったんだ。もっと注意深く観察していれば。