ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

「どうかしたのか」

 ハッと顔を上げると、進藤先生がPHSを片手に持って立っていた。

 他の看護師から連絡を受けて急いで来たのだろう。額に汗が浮いている。

「はいっ、午前十時までは血圧も脈拍も正常、発熱なし。胸痛はあったようですが、数分で消失。十一時半、ナースコールがあり訪室。その際チアノーゼを起こしていることを発見しました」

「なるほど。わかった」

 早口で報告をすると、進藤先生は大村さんの様子を一目見てすぐに言った。

「緊急オペだ。急性大動脈解離の可能性がある」

 先生は自分でオペ室に連絡をし、至急で準備を進めるよう指示を出した。

「一緒に行く。高場さん、ベッドの足の方持って」

「はい!」

 ちょうどよく看護補助者さんが酸素ボンベやモニターを運んできてくれた。

 それらを装着し、私と先生はベッドごとオペ室へ向かう。

「大村さん、大村さん。大丈夫ですからね。先生がちゃーんと麻酔かけて、痛くないようにしてくれますから」

 聞こえていないかもしれないけど、私は大村さんに話しかけ続ける。

 痛みに弱くて臆病な大村さん。オペをすると知ったら、不安でたまらないだろう。

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