ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました
「そうですよ。心配しないでください」
進藤先生は瞼を閉じている大村さんに、微笑んでみせた。
「急変は初めてか?」
エレベーターに乗り込みながら、進藤先生が聞く。
「ええ、受け持ち患者の急変は初めてです」
先輩看護師の急変の補助をしたことはある。と言っても、患者を大部屋から個室に移したくらいだ。
「よく冷静に対処できたな。誰かを呼ぼうとして、その場を離れてしまう若い子が多いんだ」
若い看護師は、急変した患者の観察を忘れ、助けを求めてその場を離れてしまうケースが多々あるらしい。
わかる。その気持ち、ものすごくわかる。先輩なら患者さんを助けられるかもって思うもん。
「全然冷静じゃありません。もっと、気をつけてあげられたらよかった」
正直、クレーマーの大村さんから早く逃れたい気持ちがあった。遠ざけたい気持ちもあった。
うっとうしがられても、あのときの胸痛を甘く見ずに大村さんに張り付いていれば。
「仕方ない。たとえ二十四時間つきっきりで観察していても、急変は起こり得る」
「先生……」
「今回評価できるのは、すぐさまナースコール対応したこと、迷わずドクターコールできたことだ。報告もできている。合格だ」