ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

 髪はボサボサ、眉毛はない、てろんとしたTシャツワンピからくっきり見える、ブラジャーのライン。

 いや違う、ブラというか、肉。肉の段。

 ……誰、この疲れ切ったおばさん!

 洗面台に寄りかかると、陶器の台がミシッと音を立てたので、慌てて手を離した。

 これが、私。このだらしない姿が、私の本当の姿。

 だからって、悪口を言われて当然だとは思わない。

 あんな悪意を人に向けて放つのは、理由がどうであれ正当化されるべきではない。

 ただ、小顔にしか許されないショートカットで、痩せていてきれいな福田さんから見たら、私がだらけて見えるのだろうということは理解できた。

 このままじゃいけない。

 進藤さんだって今はいいけど、これがずっと家にいたら、うんざりしてしまうかも。

 この前レストランに行ったときだってそうだ。私は笑われた。そして、一緒にいた進藤さんも笑われたのだ。

 私のせいで、進藤さんが物好き──たとえ、本当にそうなのだとしても──扱いされるのは、はなはだ不本意だ。

 変わらなきゃ、私。変わろう。変わりたい!

 今まで感じたことのない強い思いを抱き、私はいつもより早足で歩いた。

< 85 / 171 >

この作品をシェア

pagetop