若き社長は婚約者の姉を溺愛する
妹にきたお見合い話
 ――終業時間まで、あと三分。

 イレギュラーで引き受けた会議資料の作成も終わった。
 作成した資料にミスがないか、チェック済み。 
 サッと椅子から立ち上がり、部署を回っていく。

「本日、頼まれた営業会議の資料です。展示会にかかる予算と会場候補をいくつか、私なりにピックアップしておきましたので、ご確認ください」
「えっ! 頼もうと思っていたのに、どうしてわかったんだろう……」

 不思議でもなんでもなく、突然頼む社員が誰なのか、慣れてくるとわかってくる。
 だから前もって頼まれそうな仕事は、先に終わらせておけば、いきなり頼まれることもなくなる――と思いたい。

「お先に失礼します」

 今日もなんとか残業は回避でき、ホッと胸をなでおろす。

「ロボ、すごいな」
「今日もロボ先輩は完璧でした」

 入社し、宮ノ入(みやのいり)グループ本社の総務部に配属されて、三年目。
 会議の書類作成、お客様のお茶出しなどの雑務をこなしている。
 そんな私は、この四月で二十五歳になる。
 仕事を淡々とこなす私のあだ名は、『ロボ』と呼ばれていて、飲み会も業務中のおしゃべりも参加しないから、謎の人物。
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