若き社長は婚約者の姉を溺愛する
「仕事も仕事以外も、色々とやることがある」

 いつも忙しそうにしているから、驚かないけど、土曜日もばっちりスーツ姿。
 プライベートな部分をあまり知らないことに気づいた。
 会社に寝泊まりしているわけじゃなさそうだけど、隙を見せないようにしている二人から、生活感は感じない。

「美桜。今から食事に行こう」
「食事ですか?」
「誕生日のお祝いだ」

 笑った瑞生さんの顔は、得意そうな顔をしていて、それが可笑しかった。
 きっと私の誕生日が今日だとわかった時も同じ顔をしていた。

「……はい」

 なんでもない日だった誕生日が、瑞生さんのおかげで特別な日になった。
 それに、会えないと思っていたのに会えたのは嬉しい。
 継母たちが怖くて逃げだした今はなおさら、その存在が特別に感じる。

「美桜さんは昼食だけなら、家の人から怪しまれず戻れるでしょう?」
「はい。助かります」

 八木沢さんのこういう気配りは、正直すごいと思う。
 今、私が外に出たのは気づいただろうけど、夕方までに戻らなかったら、継母は『警察に届けるところだった』などと言い出したり、ヒステリックになるのは目に見えていた。
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