若き社長は婚約者の姉を溺愛する
終業時間から十分経ち、時計を見た私に気づき、瑞生さんは私の体を放す。
沖重の家に急いで帰って、家事をするのも今日が最後。
「じゃあ、明日」
「はい。明日」
私たちはそんな挨拶をして別れた。
離れるのが、寂しいと思ったけど、明日までの我慢。
それに、私の首のネックレスには、瑞生さんがくれた婚約指輪がある。
婚約指輪に触れると、自然に顔が緩んでしまう。
無表情でいるのが私なのに、嬉しいことの連続で、無表情を作るのが難しい。
そんなことを思いながら、会社を出て電車に乗り、沖重の家へ帰った。
今日の夕飯は冷凍庫にある作り置きを全部出す予定だった。
冷蔵庫も冷凍庫も綺麗に片付けてある。
いなくなる準備は完璧だった――
「こんな早い時間に一臣さんがいる……?」
道路脇に止められた車は、一臣さんのものだった。
それに父もいるようだ。
「ただいま戻りました……?」
「帰ったわね! 美桜!」
家の中へ入ったなり、鬼のような形相をした継母が待っていた。
仁王立ちし、恐ろしい目で私を睨む。
危険を察知した私は、逃げなくてはと思ったけれど、怖くて足が動かなかった。
父の鋭い声が、リビングから聞こえた。
「美桜、こっちへ来い! 今すぐにだ!」
「な、なんですか……?」
ここにいてはいけないと思い、逃げようと身を引いた私の腕を継母が素早く掴む。
「……っ!」
沖重の家に急いで帰って、家事をするのも今日が最後。
「じゃあ、明日」
「はい。明日」
私たちはそんな挨拶をして別れた。
離れるのが、寂しいと思ったけど、明日までの我慢。
それに、私の首のネックレスには、瑞生さんがくれた婚約指輪がある。
婚約指輪に触れると、自然に顔が緩んでしまう。
無表情でいるのが私なのに、嬉しいことの連続で、無表情を作るのが難しい。
そんなことを思いながら、会社を出て電車に乗り、沖重の家へ帰った。
今日の夕飯は冷凍庫にある作り置きを全部出す予定だった。
冷蔵庫も冷凍庫も綺麗に片付けてある。
いなくなる準備は完璧だった――
「こんな早い時間に一臣さんがいる……?」
道路脇に止められた車は、一臣さんのものだった。
それに父もいるようだ。
「ただいま戻りました……?」
「帰ったわね! 美桜!」
家の中へ入ったなり、鬼のような形相をした継母が待っていた。
仁王立ちし、恐ろしい目で私を睨む。
危険を察知した私は、逃げなくてはと思ったけれど、怖くて足が動かなかった。
父の鋭い声が、リビングから聞こえた。
「美桜、こっちへ来い! 今すぐにだ!」
「な、なんですか……?」
ここにいてはいけないと思い、逃げようと身を引いた私の腕を継母が素早く掴む。
「……っ!」