若き社長は婚約者の姉を溺愛する

　継母は私の肌に、爪を食い込ませ、私の体を引きずり、連れていく。
　リビングの床へ乱暴に突き飛ばし、背中を殴られて倒れ込む。
　顔を上げると、父と一臣さん、梨沙が揃っていて、私を睨んでいた。
　取り囲まれた私は完全い逃げ場を失い、その扱いは罪人のようで、怖くて震えた。

「美桜。これはなんだ」

　そう言って、私の目の前に、父がばらまいた写真は、この間の料亭へ行った時、瑞生さんと道で出会った時のもの。
　車に乗る瞬間が撮られている。
　それから、昼休みに公園で食事をする私たち。
　どこからどうみても、付き合っているようにしか見えない。

　――誤魔化すことも、言い逃れもできない。
　
　恐ろしくて、継母と梨沙の顔が見れず、床を見つめ、胸元の指輪を握りしめていた。

「興信所を使って宮ノ入社長の身辺を探ってもらった。会社に女性を連れてきたというから、相手を探ったが、まさか、お前だったとはな！」
「最初から付き合っていたってわけね。知らないなんて嘘をついて、陰で私を笑っていたんでしょ！」

　腹を立てた梨沙は私の体を突き飛ばし、継母は私の髪掴む。
　
「や、やめてください……」

　苦しそうな顔をした私を見て、継母は冷ややかな目を向けた。

「母娘揃って泥棒とはね。血は争えないわね」