若き社長は婚約者の姉を溺愛する
「はあ? 勝手? 私たちの許しもなく、宮ノ入グループで働いたのは誰?」

 私の自由を管理していたのは継母たちで、梨沙は当然とばかりに女王様のような態度を見せた。

「ちゃんと出勤するのよ。お金もないし、行くしかないけどね?」

 私の手元にあるのは、わずかなお金だけ。
 使っていたバッグや財布はどこへいったのかわからない。

「それじゃあ、私は今から、宮ノ入さんのマンションへ行ってくるわね」
「なにをするの……?」

 梨沙は笑いながら、私の目の前にカードキーをちらつかせた。

「宮ノ入さんに連絡したら、美桜がどうしているか知りたがってたの。だから、教える代わりに、私の言うことを聞いてもらうつもり」
「やめて! 迷惑をかけるのだけは、お願いだからっ……」

 私が必死に止める姿を眺め、梨沙は満足したのか、勝ち誇った顔をし、アパートから出ていった。

 ――また私のせいで、迷惑をかけてしまった。

 どうしても離れることができず、そばにいることを選んだ自分を悔やんだ。

「ごめんなさい……」

 謝っても届かない声。
 私の声は瑞生さんに二度と届くことのない声だった。
 今の私には、あの場所までたどり着くには遠すぎて、届かないとわかっていたけど、私は謝らずにはいられなかった。
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