若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 ◇◇◇◇◇

 掃除スタッフとして働き、三日目。
 継母は宮ノ入本社で働かせることが、私への最大の嫌がらせになると判断したようで、配属先は宮ノ入本社になった。

「美桜さんは仕事も丁寧で、早いから助かります」

 そう言ったのは、アルバイトの真嶋さん。
 大学に通いたくて、ファミレスのアルバイトをかけ持ちしている。
 父親が仕事をリストラされてしまい、収入が減って生活費が必要なため、新しい仕事が見つかるまでは、大学に通う余裕がないらしい。 
 大変そうだけど、とても明るい子だった。
 年も近くて、話しやすく、なにかと親切にしてくれる。

「私が作ったおにぎりなんですけど、どうぞ。今日は夕方から、ファミレスのバイトなので、食べないと力が出ないんですよね」

 午後からの休憩は、おやつというより、ちょっとしたお弁当になっていた。
 夜遅くまで仕事があるため、勤務時間帯が長い。

「ありがとうございます」

 清掃スタッフは和気あいあいとしていて、なごやかな雰囲気だった。

「あっ、美桜ちゃん。これ、お取り寄せしたせんべい。よかったら食べて」

 私は三日目になると、すっかり順応してしまった。
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