若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 何度目かの絶頂で、私のギリギリでとどまっていた意識が落ちていく。
 それと同時に、中に瑞生さんを感じた。

「もう……むり……です……」

 首を横に振り、泣き声をあげた私に、瑞生さんは愛おしげに髪をなでる。
 くたりと体をシーツに埋め、力なく目を閉じた。

「悪い。無理させたな」

 あたたかい手の感触に眠気が誘われる。
 自分の耳元に瑞生さんの息がかかった。
 私の目蓋に落とされた優しく甘いキス。
 ただのキスではなく、それは重い誓いを含んでいた。
 
「全て取り返してやろう」

 瑞生さんの低い声が聞こえてきたけれど、私は心地よい眠りに落ちて、目を開けることができなかった。
< 159 / 205 >

この作品をシェア

pagetop