若き社長は婚約者の姉を溺愛する
会長への挨拶
 生活必需品が揃った次の日、まずは朝食とお弁当を作ろうと決めた。
 炊きたての白いご飯が食べたい。

「やっぱり長年染みついてしまった習慣は、なかなか抜けないものなのね……」

 エプロンをし、キッチンに立つとなんだか懐かしくて、ただいまって言いたくなってしまう。
 動いているほうが、細かいことを考えずに済んで、気持ちが落ち着く。

瑞生(たまき)さんはまだ眠っている。
 せっかく眠っているから、起こさないように、そっと腕からすり抜けるのが大変だった。
 忙しい瑞生さんには、少しでも休んで欲しい。
 昨日、欲しい食材を書いて頼むと、すぐに揃えてくれた。
 ただし、頼んだ以上の物が。
 お米は魚沼産コシヒカリ、梅干しは一つ一つが個包装で、鮭の切り身は分厚く、なぜか頼んでいないのにイクラが付いてきた。
 手配したのは、八木沢さんに決まってる。
 自分の仕事もあって、忙しいはずなのに、瑞生さんのことになると、手を抜かない。

「なんて恐ろしいライバル……」 

 おかずの準備をしていると、炊飯器の音が鳴り、炊き上がったご飯に思わず笑みがこぼれた。

「お米が炊けるって、なんて素晴らしいの!」
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