若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 とうとうやってきた親族との顔合わせ。
 緊張するけど、避けては通れないし、どんな方なのか話してみたいと思っていた。
 私が入社した時、挨拶していた姿を覚えているけど、遠くてはっきり見えず、ぼんやりとしか覚えてなかった。

「なにを言われても絶対に気にするな。それから、俺のそばから、離れないよう気をつけろ」
「瑞生さんのおじいさんですよね? そんな危険地帯に乗り込むみたいに言わなくても」
「危険地帯なんだが?」
「そうですか……」

 瑞生さんも八木沢さんも、自分たちの祖父にあたる人なのに、身構えていて、いったいどういう関係なのか、気になる。
 瑞生さんが朝食を食べ終え、食後のコーヒーを飲んでいると、八木沢さんが迎えに来た。

「美桜さん。ありがとうございます。瑞生様が朝食をきちんと摂られるようになり、安心しました」
「今まで、食べていなかったんですね」
「瑞生様は朝に弱いので、水だけということがほとんどでしたね」

 水だけの冷蔵庫。
 異様だと思ったけど、朝食代わりに飲むためだったらしい。

「瑞生さん。人は水だけ飲んで、生きてるわけではないんですよ?」
「わかってる」
「今日のお昼は、お弁当を作ったので食べてくださいね?」
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