若き社長は婚約者の姉を溺愛する
片付けの手を止めて、お弁当が入ったバッグを渡した。
「お弁当です。瑞生さんのと八木沢さんのお弁当ですけど、足りなかったら、量を増やすので言ってくださいね」
瑞生さんは言葉もなく、嬉しそうに両手で受け取った。
「私にまで、ありがとうございます」
「直真。美桜が課の人間と掃除スタッフにお礼に行きたいそうだ」
お弁当効果なのか、瑞生さんの空気が和らぎ、周りに花が飛んでいるような気がした。
「わかりました。宮ノ入の社内なら安全でしょうし、来週までにはなんとかします」
「なにをなんとかするんですか?」
「秘密です。それより、美桜さんはクソジジイに挨拶に行くらしいじゃないですか。頑張ってくださいね」
八木沢さんにとって、最大の気がかりは会長であり、他はどうでもいいようだった。
――いったいどんな人なの?
会長の顔を思い出そうとしたけれど、残念ながら、雲の上の人。
ぼんやりとしか、その姿は浮かんでこなかったのだった。
「お弁当です。瑞生さんのと八木沢さんのお弁当ですけど、足りなかったら、量を増やすので言ってくださいね」
瑞生さんは言葉もなく、嬉しそうに両手で受け取った。
「私にまで、ありがとうございます」
「直真。美桜が課の人間と掃除スタッフにお礼に行きたいそうだ」
お弁当効果なのか、瑞生さんの空気が和らぎ、周りに花が飛んでいるような気がした。
「わかりました。宮ノ入の社内なら安全でしょうし、来週までにはなんとかします」
「なにをなんとかするんですか?」
「秘密です。それより、美桜さんはクソジジイに挨拶に行くらしいじゃないですか。頑張ってくださいね」
八木沢さんにとって、最大の気がかりは会長であり、他はどうでもいいようだった。
――いったいどんな人なの?
会長の顔を思い出そうとしたけれど、残念ながら、雲の上の人。
ぼんやりとしか、その姿は浮かんでこなかったのだった。