若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 ◇◇◇◇◇

「やっと終わったな」
「追い詰められたネズミに噛まれないよう綺麗に片付けるには、今回のようなやり方が一番でしたね」

 マンションに帰宅すると、二人は大きな仕事をやり遂げた達成感からか、とてもいい笑顔をしていた。
 その笑顔に、少し引っ掛かるものを感じながら、昨日焼いたパウンドケーキがあったのを思い出し、私は二人に聞いた。
 
「抹茶のパウンドケーキを焼いたんですよ。お茶を淹れましょうか?」
「ああ」
「ありがとうございます」

 抹茶のパウンドケーキは、ずっと瑞生さんが私に作ってほしいと言っていたケーキだった。
 そんな難しいケーキじゃないですよと言ったけど、八木沢さんが食べて自分が食べていないのが、不満だったとか。

「やっと食べられる」
「すごい記憶力ですね。ずっと前のことなのに」
 
 それも、甘納豆を混ぜ、上にトッピングしただけの簡単な抹茶パウンドケーキ。 
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