若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 人付き合いが嫌いというわけではなく、私には理由があった。
 
 ――私に自由はない。

 それは、就職する前からそうで、家では家政婦と同じ。
 私が働く許可をもらえたのは、今までどおり、家事をすると約束をしたからだった。
 継母と異母妹は、いっさい家事をしない。
 文句を言おうものなら、父がいない時に嫌がらせをする。
 最初は庇ってくれていた父だったけど、二人は父に、私の悪口を吹き込み、異母妹を虐めているとか、継母に冷たいとか、ありもしないことばかり言った。
 そんなことを長年繰り返されたせいで、私は家庭内で孤立し、嫌な娘になっていた。

「就職したら、継母たちから逃げられると思っていたのに……」

 それは大きな誤算だった。
 大学を卒業し、せっかく大きな会社に就職したのに、給料がよくても、継母の嫌がらせが怖く、動けずにいた。
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