若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 夜も眠れているし、食事も食べている。
 だから、顔色が悪いということはなくなった。
 
「瑞生さんがお休みを取るのは賛成です。でも、無理はしないで下さいね。後からずっと残業なんて悲しいですから」
「大丈夫だ」
「そんなに行きたい別荘なんですか?」
「ああ」

 新婚旅行で一週間休んだ後は、残業続きでひどい目にあった。
 私が手伝うと言っても大したこともできず、顔を合わせるのは、仕事場だけという悲しい思いをしたのは、言うまでもない。

「たまにはいいだろう?」 
「そうですね」

 確かに今は紅葉シーズンだから、出掛けるにはちょうどいい季節だった。
 秋の優しい空気が、旅行もいいかもしれないと思わせていた。

 ◇◇◇◇◇
 
 どこに別荘があるかは、お楽しみということで、私に秘密だった別荘。
 到着した別荘は、別荘地として世間に知られている有名な場所にあった。
 車を降りると、標高が高いせいか、少し肌寒い。
 でも、ひんやりとした空気は心地良く、自然に囲まれた景色も美しい。
 近くには池もあり、白い鳥が飛んでくる。

「やっと手入れが終わったんだ。古くて階段や床の危ない場所が多かったから、リフォームをして、管理人も雇った」
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