若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 惨めな気持ちになるし、普通の人たちと違って、自分が幸せじゃないことを実感してしまうから。

「ああ。詳しく言わなくても大丈夫ですよ。ちゃんと調査してありますから」
「調査!?」
「気分を害されたかもしれませんが、宮ノ入(みやのいり)グループの社長ともなると、結婚相手の調査も必要なので。申し訳ありません」

 宮ノ入社長の結婚相手として、梨沙が選ばれたけど、私の存在が障害になっている――そういうことだろうか。
 
「梨沙と宮ノ入社長の結婚のお邪魔になるようでしたら、家から出て行きますし、むしろ大歓迎です」

 八木沢さんは苦笑した。

「違いますよ。社長の相手は梨沙さんではなく、美桜さんです。お見合いの話は、美桜さんに持っていきました」
「わ、私ですか!? どうして私なんですか? 社長と会ったこともないのに……」
「面識があるはずです」

 今年の春に海外支店から戻った宮ノ入直系の社長。
 そんな人と、どこで私が会うというのだろうか。
 そもそも一目惚れされるような容姿ではないし、ひっそり目立たないように生きている。
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