若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 学生時代にできた友人は、私の友人になったせいで、継母が裏から手を回し、親の会社の取引が駄目になったり、銀行から融資が受けられなくなったり――そんなことが続き、おかしいと思って、友人に尋ねたら、裏には継母の実家の存在があり、継母がやっていたことだと、判明したのだった。 

美桜(みお)さんに関わる人は、みんな不幸になるのよ』
『母親が亡くなったのも美桜のせいなんじゃない?』

 継母と異母妹から、ひどい言葉をかけられる日常により、私は心を閉ざした。
 私の実母は、早くに亡くなった。
 元々、病弱な人で子供を産むのも反対されていた。
 母が死んだのは、私のせいと言われて育った私は、明るい場所にいてはいけない気がして、目立たないよう地味に暮らすようになった。
 ロッカールームの鏡に映った自分の姿が目に入る。
 長い黒髪、黒ぶちメガネ、黒のパンツスーツとパンプス。
 バッグも黒で、まるで魔女のよう。
 
 ――でも、安心できる。

 この服装でいれば、継母と異母妹は、私に嫌みを言うこともなく、父から派手すぎると注意されることもない。
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