若き社長は婚約者の姉を溺愛する
おにぎりを渡した時、ふと思った。
彼の鋭さが消えて、微笑む顔を見るのが、私は好きなのかもしれないと。
同じおにぎりを食べながら、私たちはどちらもなにも話さず、黙ったままだった。
いつもと同じ沈黙の時間は、居心地が悪いものじゃなく、お互いが静かな時間を好むと知っているから、会話が無くても平気でいられる。
食後のあんみつは、甘いミカンと桃、こし餡、透明な寒天に、あっさりした白蜜。口の中に残らない甘さで、美味しい。
気づくと、隣の社長は食べ終わり、うとうとしていた。
変わらない昼休みなのに、私たちの距離は近くなり、お互いの香りがわかるほど。
なぜか、私はそれが心地よくて、いつもと同じように、図書館で借りた文庫本を開き、本を読む。
この時間がしばらく、続いたらいいのにと思いながら――
「美桜」
私の名前を呼ぶ声は、とても静かで抑揚のないもので、聞き流してしまいそうになるくらい自然だった。
「名前、呼んでもいいか?」
「……はい」
私たちはベンチに座り、前を向いたまま会話をした。
返事を聞いて、安心したのか、また目を閉じで眠ってしまった。
私の肩に、彼の髪が触れ、柑橘系のすっきりした香りが漂う。
彼の鋭さが消えて、微笑む顔を見るのが、私は好きなのかもしれないと。
同じおにぎりを食べながら、私たちはどちらもなにも話さず、黙ったままだった。
いつもと同じ沈黙の時間は、居心地が悪いものじゃなく、お互いが静かな時間を好むと知っているから、会話が無くても平気でいられる。
食後のあんみつは、甘いミカンと桃、こし餡、透明な寒天に、あっさりした白蜜。口の中に残らない甘さで、美味しい。
気づくと、隣の社長は食べ終わり、うとうとしていた。
変わらない昼休みなのに、私たちの距離は近くなり、お互いの香りがわかるほど。
なぜか、私はそれが心地よくて、いつもと同じように、図書館で借りた文庫本を開き、本を読む。
この時間がしばらく、続いたらいいのにと思いながら――
「美桜」
私の名前を呼ぶ声は、とても静かで抑揚のないもので、聞き流してしまいそうになるくらい自然だった。
「名前、呼んでもいいか?」
「……はい」
私たちはベンチに座り、前を向いたまま会話をした。
返事を聞いて、安心したのか、また目を閉じで眠ってしまった。
私の肩に、彼の髪が触れ、柑橘系のすっきりした香りが漂う。