若き社長は婚約者の姉を溺愛する
梨沙はなぜ気づかないのか――毎回、一臣さんがわざわざ自分の目に入るところで、私に物をあげていることに。
「美桜にだけあげるの!?」
「あの……。私はいいので、お返しします」
お菓子を返そうとすると、一臣さんは箱を私に押しやる。
「僕は美桜ちゃんにあげるって言ったんだけど? 梨沙じゃなくてね」
「ひどーい! 美桜がお菓子を独り占めするなんて!」
その梨沙の声にを聞いた継母が、こちら歩み寄り、手を振り上げた。
「……っ!」
目を閉じた瞬間、パンッと頬に痛みがはしった。
かけていた眼鏡が床に落ち、嫌な音をたてた。
「人の物を盗むなんて、本当に母親そっくり! 自分の立場を考えなさい! 梨沙が欲しいと言ったものは、梨沙に譲るべきでしょ」
「おばさん! なんてことを! 美桜ちゃん、大丈夫?」
「平気ですから……」
一臣さんにかばわれると、継母がヒステリーを起こす。
それに一臣さんが、私を気遣いながら、笑っているのを見逃さなかった。
私がいつも眼鏡をかけているから、視力が悪いと一臣さんは思い込んでいるけど、これは伊達眼鏡。
だから、私は眼鏡がなくても、一臣さんがどんな顔をしているのか、よくわかる。
一臣さんは優しげに振る舞うけど、実際は違う。
わざと継母や梨沙が嫌がらせするように仕向け、私を庇うことで、自分に好印象を持たせようとしているのだ。
「美桜にだけあげるの!?」
「あの……。私はいいので、お返しします」
お菓子を返そうとすると、一臣さんは箱を私に押しやる。
「僕は美桜ちゃんにあげるって言ったんだけど? 梨沙じゃなくてね」
「ひどーい! 美桜がお菓子を独り占めするなんて!」
その梨沙の声にを聞いた継母が、こちら歩み寄り、手を振り上げた。
「……っ!」
目を閉じた瞬間、パンッと頬に痛みがはしった。
かけていた眼鏡が床に落ち、嫌な音をたてた。
「人の物を盗むなんて、本当に母親そっくり! 自分の立場を考えなさい! 梨沙が欲しいと言ったものは、梨沙に譲るべきでしょ」
「おばさん! なんてことを! 美桜ちゃん、大丈夫?」
「平気ですから……」
一臣さんにかばわれると、継母がヒステリーを起こす。
それに一臣さんが、私を気遣いながら、笑っているのを見逃さなかった。
私がいつも眼鏡をかけているから、視力が悪いと一臣さんは思い込んでいるけど、これは伊達眼鏡。
だから、私は眼鏡がなくても、一臣さんがどんな顔をしているのか、よくわかる。
一臣さんは優しげに振る舞うけど、実際は違う。
わざと継母や梨沙が嫌がらせするように仕向け、私を庇うことで、自分に好印象を持たせようとしているのだ。