若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 継母は私を嫌っている。
 よくある話で、私の母が亡くなると同時に、父の愛人だった女性が後妻に入った。
 私の母と父は政略結婚で、父が好きだったのは、継母だったと、後に聞いた。
 別れさせられた継母は、母を恨み、その娘である私も敵視している。
 私の扱いに対して、注意した人たちは、全員ひどい目にあった。
 継母はお金を使って、人を雇い、ありとあらゆる嫌がらせをし、追い詰めて、私と関わったことを後悔させた。 
 それを幼い頃から、幾度となく目にしてきた私は、親しい人を作らず、幸せにしているところを見せず、笑わずに暮らすのが、一番の平和だと学んだ。

 ――他の人に迷惑をかけたくない。

 少なくとも、私が関わらなければ、幸せに暮らせるのだから。

「ただいまぁ。もう疲れちゃったぁ~」

 甘えた声が玄関から聞こえてくる。
 異母妹の梨沙が帰ったようで、継母はリビングから梨沙を呼ぶ。

「梨沙、帰ったの? ほら、お見合いの話が来てるのよ! 梨沙は誰かさんと違って、可愛いから、結婚相手を選ぶのが大変ね!」

 隣の家まで聞こえるんじゃないかというくらいの継母の声。
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