若き社長は婚約者の姉を溺愛する
「直真がああなったのも俺のせいだ。悪かった。あいつは俺のためだと思うと、自分がどれだけ悪人になっても構わないと思うところがある。気を付けるべきだった」
「いえ……」
「直真だが、しばらく近づくなと言ってあるから、安心していい」

 八木沢さんにとって、瑞生さんの命令は絶対である。
 近づくなという命令が、一番堪える気がした。

「眼鏡、やめたのか?」
「八木沢さんから聞いてください」
「あと一発は殴ることになりそうだな」

 瑞生さんはにっこり笑って言ったけど、喧嘩したら、どちらが強いのだろう。

「殴るのは、やめてください。瑞生さんと八木沢さんのどちらが、強いんですか?」
「直真に殴り合いで負けたことないな。ヤクザのところから、連れてきた時も乗り込んだわけだし。まあ、あの後の処理は祖父がやったけど、俺も若かったな」
「今もじゅうぶん若いです」

 どこに乗り込んだか、聞かないでおこうと心に決めた。
 きっと一般人には、そうそう入れない場所だから……

「誘拐されかけた後、実践的な戦闘術を祖父のSPから学んでいる。だからまあ、多少の撃ち合いくらいはできるな」
「多少の撃ち合い!?」
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