若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 今まででさえ、私と少しでも親しくなった人を奪い、自由を失くし、逃げられないようにしてきたのに。
 職場へ突撃されてもおかしくないくらい継母の行動は異常だった。

 ――でも、もう離れられない。離れたくないって思っている。

 まるで、お守りみたいに、私からは甘い香水の香りが漂っていた。
 これは、瑞生さんが私にくれたチャンスオータンドゥルの香り。

『自分のチャンスを掴んで逃さないって意味があるんですよ』

 木村さんが教えてくれた言葉が、頭の中にずっと残っていた。

 ――これは、私のチャンスなのかもしれない。

 私を沖重の家から、助けて連れ出してくれる相手。
 自分の固く閉ざしていた心が、和らぐのがわかる。
 瑞生さんといることで、人生で一番の安らぎをもらっている。
 この場所を失くしたくない。
 ずっとこの先も――
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