attraction
あー、手が冷たくなっていってる気がする。
いよいよ、隠し通すのも限界なのだろうか。幸村先生に気づかれるとは思ってなかったけど。
なぜか焦るはずのこの状況で、バカみたいに冷静だった。
相手が幸村先生だからかな、感情飛ばされる能力使われたかな。
なんて、ふざけたことばかり考えていると、またもや核心をついた質問をされた。
「あんた部活嫌いだろ」
「嫌いですよ」
「練習適当なのになんでレギュラーなの」
「なんでですかね」
畳み掛けられる質問に、間髪入れずに答えていく。
にしても、この先生意外と喋るな。寡黙タイプではないのか。
「怪我してんのになんで卓球上手いわけ?」
「怪我してるからですよ、先生」
一番、聞かれたくなかった。
というか、私の実力に気づかれたくなかった。
卓球やっているからこその怪我なのだ、この腱鞘炎は。
部長とか副部長とか、他のみんなと比べ物にならないくらい。
そのくらいやり込んでいるから、怪我したんだ。
「私、卓球大好きなんですよ」
私は震える声で言った。
「ふーん」
にやっと口角をあげて。
幸村先生は、初めて(少しだけ)笑った。
「カマ、かけましたね」
そう言って、私は保健室に入った。
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