attraction

「さっきここに来る時、声かけられてさ。怪我してんの?って」

「え〜?レアじゃん、そんな先生」

「卓球上手いのになんで練習適当なの、って」


こんな感じで質問されたと思うけど、動揺しすぎててさっきまでの会話すら鮮明に思い出せない。

にしても、先生はどうして上手いって思ったんだろうか。


「すごい観察力だね〜幸村先生は」

「なんか狂っちゃうよね。自分のペース忘れそう」


いままで部長たちの癇に障らないように適当にやり過ごしてきたこの『日常』が、幸村先生によって少しずつ壊されていく。

ぐちゃぐちゃに組み合わさっていたパズルのピースが、一旦バラバラにされて、正しい絵柄通りに直されていく。

まだ今は、ぐちゃぐちゃなことに気づかれた段階かもしれないけれど、そんな予感がした。

期待はしない。期待値以下だったときのダメージは計り知れないから。

けれど、保健室入るときに見た幸村先生の背中が、少しだけ大きく見えた。


「もしかしたらヒーローかもよ?」


梓は哀しい顔でそう言った。
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