怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
まるで依頼者に詳しい事情を聞くときのようなお仕事モードな口調の隠岐先生を前に、私は真剣に昨夜の記憶を思い出してみる。けれど、はやりバーに行ってからの記憶がプツンと切れていてなにも思い出せない。
そのまま口をつぐんでいると、再び隠岐先生が穏やかに口を開いた。
「それじゃあ、俺とセックスしたときのことは覚えてる?」
「セッ……!」
包み隠さずに告げられたストレートな言葉に思わずうろたえてしまった。なにもそんなに堂々と言わなくてもいいのに。
ここはカフェで周りには私たち以外にも客がいる。幸い聞こえなかったようだけど、できればもう少しオブラートに包んだ言い方をしてほしかった。
「まさかそれも覚えてないのか」
隠岐先生に再び確認された私は「お、覚えています」と答えてから、恥ずかしさから顔を下に向けた。そのままぼそぼそと小声で言葉を続ける。
「覚えていますが、どうしてそういうことになったのかを思い出せません」
「それはつまり、どうして俺とセックスしたのかを覚えていないってことだな」
「セッ……はい、そういうことになります」
またも告げられたストレートな言葉にドキッとしたものの、なんとか平常心を保ってうなずいた。すると、隠岐先生が静かにため息をこぼす。