怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
一方で私は悠正さんと結婚さえしていれば母の束縛からは解放されるので、この先もずっとメリットがある。
だけど、私たちはお互いにメリットがあるから結婚をした。もしも片方にメリットがなくなってしまったときはどうなるのだろう。離婚ということになるのだろうか……。
そんなことをぼんやりと考えていると、不意に隣から視線を感じた。振り向くと、悠正さんが私を見つめながら少し困ったように笑っている。
「優月は、あの夜のことやっぱりなにも思い出せない?」
「あの夜?」
いつのことだろうと一瞬考えてすぐに理解する。バーでお酒を飲んだあと、体を重ねてしまった夜のことだ。
「すみません。私、あの日のことは本当になにも覚えていなくて」
「そうだよな。そうとう酔っていたから仕方ないか。でも、あの言葉を忘れられているのはショックかもしれない」
「言葉ですか?」
そういえば以前もそんなことを悠正さんは言っていた気がする。
覚えていないなら別にいいと言われたから深く考えないようにしていたけれど、どうやら私が覚えていないことに悠正さんはショックを受けているようだ。