怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~


「それなら、もう一度あのときと同じことをしたら思い出すかもしれないよ」

「あのときと同じこと……?」

「また俺に抱かれて思い出せって意味」


 普段よりも低い悠正さんの声に、思わずドキッと心臓が跳ねた。抱き寄せられた胸の中で私は体を強張らせる。


「え、えっと……それは、つまり……」


 もう一度、悠正さんと体を重ねるということ。

 断片的に残っているあの夜の情事中の記憶が蘇り、頬が一気に紅潮していく。

 また同じことをするのはたぶん無理だ。恥ずかしい。そもそも私と悠正さんはそういう関係じゃない。

 夫婦だけれどそれは書類上のことであって、本来の私たちの関係は同じ職場で働く弁護士と事務員なのだ。

 そもそも本当に私は悠正さんに告白をされたのだろうか。

 もう一度体を重ねたら思い出す? いや、思い出せない気がする。

 けれど、仮に告白されていたとして覚えていないのはやっぱり失礼だからなんとしてでも思い出すべきなのだろうか。そのためにもう一度悠正さんと体を重ねる……。

< 113 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop