怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
あの夜の真実
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『小野坂さんは俺と結婚するんだ』
――少し強引に事を進めすぎただろうか。でも、彼女を誰かに取られないためにはああするしか他に思いつかなかった。
『俺も優月のことを好きになりたいし』
――そんなのは大嘘だ。俺はもうとっくに彼女に惚れている。どうしようもないくらいに好きだ。
俺が初めて優月と出会ったのは三年前。大学を卒業したばかりの彼女がうちの事務所に事務員として働き始めた頃だった。
先輩たちから仕事を教わりながら、少しずつ自分のできることを増やそうと必死に頑張る姿に初めから好感を持っていた。
共有スペースでうたた寝をしていた俺にひざ掛けをかけようとしてくれたり、美味しいコーヒーを淹れてくれたり、俺の眠気覚ましのための話し相手になってくれたり。
とある裁判の前には『私は隠岐先生の味方です』と応援の言葉で俺の背中を押してくれた。それがとてもうれしかったし、勇気が湧いた。
優月と出会ってわりと早い段階から俺は彼女に惹かれていたのだと思う。