怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
『おかげで相談を受けるときにはすっかり落ち着いていたし、きちんと今の状況を話せていた。泣いて取り乱しながらだと話を聞き取るのに苦労するから助かったよ。ありがとう』
『そんな、私なんて……』
そう言って優月はまたも否定するものの、内心はうれしかったのだろう。俯いている顔にふんわりと笑顔が浮かんでいることに気が付いた。
――かわいいな。
俺に隠れながらこっそりと微笑む優月の姿に不覚にもドキッとさせられた。
すると、優月が控え目に口を開く。
『先ほどの女性、事務所に来たときからすごく不安そうで、今にも泣き出しそうに震えていたんです。隠岐先生をお待ちいただく間、ひとりで待たせるのもなんだか心配で。張りつめている彼女の気持ちを少しでも和らげてあげられたらと思ったのですが、微力でも力になれたようでよかったです』
そう言うと、優月は顔を上げて俺に笑顔を見せた。
その瞬間に気付かされた。
――俺はやっぱり彼女のことが好きだ。
以前から薄々とこの気持ちには気が付いていたものの、それが確信へと変わる瞬間だった。
そうなればさっそく優月にアプローチをかけるべく俺は行動を起こすことにした。