怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「とにかく、お互いに酒も入っていたせいか甘い雰囲気になって、据え膳食わぬはなんとやらって言うだろ。だから、すまない。自制できなかった」
「あ、いえ……」
隠岐先生の謝罪に私は首を横に振った。
話を聞いたところお互い同意しての行為だったのだと思う。
隠岐先生と同じ職場で働くようになって今年で三年目。普段の彼を知っている私は、隠岐先生に限って嫌がる女性を無理やり組み伏せて事に及ぶようなそんな犯罪のような真似は絶対にしない人だと信じている。
ふと沈黙が流れ、気まずくなった私は再びスクランブルエッグを口に入れた。こんな状況ではあるものの、その美味しさに思わず目がパァッと輝いてしまう。
とろりとした食感となめらかな口当たりがたまらない。口の中にほんのりと広がっていくバターの香りもまたいい。世の中にはこんなにも美味しいスクランブルエッグがあったんだ……。
「美味しいだろ、そのスクランブルエッグ」
ふた口目を口に入れたとき、目の前に座る隠岐先生がそう言った。私は大きくうなずく。
「はい、とっても。こんなに美味しいスクランブルエッグを食べるのは初めてです」
「俺もここで初めてそれを食べたときは感動で震えたな。ちなみにオムレツも絶品」
「それはぜひ食べてみたいです」