怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
愛のない結婚
*
『俺が原因であいつとはうまくいかなかったんだもんな。悪かったよ、お前の女を取って』
昨日から鏑木さんの言葉が頭から離れない。
悠正さんからは気にしないで忘れてと言われたけれど無理そうだ。
どうしてもいろいろと考えてしまう。
もしかしてふたりはひとりの女性を巡って争っていたのだろうか。そのせいで関係がこじれてしまった?
‟お前の女を取って„という言葉から想像すると、鏑木さんが悠正さんの恋人を横取りしたのだろうか。
『大学時代、お前がユキーー』
恋人だった女性は‟ユキさん„というのかな。
悠正さんが私の耳を塞いだので鏑木さんの言葉を最後まで聞くことができなかった。どうして彼はそんなことをしたのだろう。
その続きを私に聞かれたくなかったとしか思えない……。
「――おーい、優月。聞いてる?」
目の前から聞こえた声にハッとして私は顔を上げた。そこには先月振りに会う友人の瑠奈がいて、不思議そうに私のことを見つめている。
「ぼんやりしてどうした?」
「ううん、なんでもない。ごめんね」
お気に入りのオープンカフェのテラス席で今日は月に一度の瑠奈とのランチの日だ。