怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「昨日も話したけど……そうそう、俺の奥さんの友達の件。……うん、大丈夫そう? ……わかった。それじゃあ一度、彼女の方から律花の事務所に連絡してもらうように……ああ、そっか、名前な」
すると、電話の途中で悠正さんの視線が私に向けられ「優月」と声をかけられる。
「は、はい」
返事をする声が裏返ってしまったのは、先ほど彼の口から俺の奥さんと言われたことにドキッとしたから。
「友達の名前を教えてもらってもいい? 律花が……えっと、お友達の相談に乗ってくれる弁護士が名前を知りたいらしいから」
「名前ですね。瑠奈です、立木瑠奈」
「瑠奈さんね。――もしもし、律花」
悠正さんの視線が私から逸れると、再び電話の向こうの相手――律花さんに声をかける。
「名前は立木瑠奈さん。……うん、そう……え? ああ、わかった。瑠奈さんには俺の奥さんから律花の事務所の連絡先を伝えてもらうことにするんで、それじゃあよろしく」
そこで通話が終わった。悠正さんは携帯端末を耳から離すと、私に向かってにこりと微笑む。
「大丈夫。受けてくれるって。まずは一度、顔を合わせて話を聞きたいらしいから、優月から瑠奈さんにそのことを伝えてほしいんだ。今、優月のスマホ宛てに律花の事務所の連絡先を送るから」