怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
ぴったりとくっついていた私たちの間には距離がうまれ、悠正さんのつらそうな表情が目に入った。
「優月を守れなくてごめん」
悠正さんはソファから立ち上がると、私に背を向ける。
「今日はゆっくりと休んだ方がいい。俺は部屋にいるから、なにかあればすぐに呼んで」
そう言い残し、彼はリビングを出ていってしまった。
パタンと閉まる扉の音がやけに大きく響く。
――守れなくてごめん。
ひとり残された私は先ほどの悠正さんの言葉を思い出して、なんだか無性に寂しくなった。
こんな怪我をしたときくらいそばにいてほしかったのに、悠正さんは私を置いて部屋に戻ってしまった。それが突き放されたように感じた。
無事でよかったと抱き締めてくれたのに、悠正さんの心が一瞬でどこか遠い場所に行ってしまった気がする。
そのときふと思い浮かんだのは、包丁を持った男性を目の前にした悠正さんが自分の身を呈して元恋人を守ろうとした光景だった。
私が悠正さんを傷つけられたくなくて守ろうとしたように、悠正さんは元恋人のことを守ろうとしたんだ。
自分を盾にできてしまうくらい大切な存在なんだ……。