怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
その判決に不満を抱いた男が元妻の代理人である律花に逆恨みをして今回の犯行に及んだ。
そして、包丁を持って襲いかかる男の異変にいち早く気が付いた優月が俺と律花をかばうようにして男の前にたちふさがり、腕を深く切りつけられてしまった――。
あれからもう六日が経つ。優月の腕の怪我は順調に回復しているが、大事を取って一週間ほど仕事を休んでいる。
事務所の皆には今回の事件について軽く触れる程度に説明はしていて、誰もが優月の無事にホッと胸を撫で下ろしていた。
優月は、今は実家に帰っている。俺は仕事で日中は彼女のそばにいられないため、ひとりであのマンションにいるよりも実家で母親と過ごした方が優月にとってはいいと思ったからだ。
事件の翌日、俺も一緒に優月の実家へ向かい、あの事件のことをまだ思い出したくないであろう優月のいない場所で、彼女の母親に今回の件の全容を話して謝罪した。
優月のことを守ると約束したのに、彼女に怪我を負わせてしまった自分が情けなく、優月の母親から強い叱責を受けて当然だと思っていた。けれど、彼女は俺を責めることはしなかった。