怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
優月が怪我をしたことに強いショックを受けてはいたものの、優月が無事ならそれでいいと静かに告げた母親は、謝罪する俺に向かって『悠正さんのせいではない』と言った。
でも、もしかしたらいつか俺のせいで優月を傷つける可能性が少しもないわけではないのだ。
今回の事件でそのことを改めて思い知らされてしまった。
弁護士という仕事をしていれば今回の律花のように正当な業務をしたにも関わらず逆恨みをされていたなんてことはたびたび耳にする。
本人に危害を加えようとする場合もあれば、怒りの矛先が本人の周囲の人間に向けられ家族や親戚、同僚、友人にまで危険が及ぶ場合もあるかもしれない。
自分がこれまで関わってきた案件を振り返っても、俺はたぶん敵を作ってしまうような事件を扱うことが多いように思う。実際に、命に係わるほどではないが危害を加えられそうになった経験もある。
俺自身なら自分で身を守る術を知っているのでたぶんなんとかなる。最悪な事態にはならないはずだ。けれど、その危険が優月に及んだら?
今の彼女は俺の妻だ。俺に逆恨みをした人間が優月を狙おうとする可能性は十分に考えられる。そうなった場合、彼女は自分の身を守れるだろうか。