怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
今回は無事だった。同じことはもう二度と起きないことが一番だが、もしも次があったときは無事では済まないかもしれない。
俺のせいで優月を失うことになる可能性が少しでもあるのなら……。
――俺は、このままきみと一緒にいてもいいのだろうか。
優月から離れた方がいいのかもしれない。あの言葉は、そんな思いから出たものだった。
そのあとすぐにリビングを立ち去ったのは、怪我を負った優月を見ているのがつらかったから。すぐそばにいたのに守れなかった自分自身に腹が立ち、この事実に目を背けたくなってしまった。
そんな自分が情けないとは思う。でも、こわかった。
応急処置をしながらこのまま優月の出血が止まらなかったらどうなるのか。意識を失いそうな優月がこのまま二度と目を覚まさなかったら俺はどうすればいいのか。
あのときほど強い恐怖を覚えたのはおそらくこれまでの人生では初めてで、しばらくは動揺が消えなかった。
そして、怪我をした優月をリビングに残して自室へと向かい、そこで一晩中考えた。
俺はこのまま優月と一緒にいてもいいのだろうか。優月を危険にさらしてしまうのではないか。そうならないためにもはやり離れた方がいいのかもしれない……。
けれど、どんなにいろいろ考えても最後に行き着く答えは同じだった。
俺は、優月を手放したくない。