怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「小野坂さんが嫌じゃないならこのまま繋いでる。……ああ、でもこんなことしなくても俺たちもう恋人のような雰囲気出ているかもな」
隣を歩く隠岐先生がぽつりとそう言う。その言葉の意味がわからずきょとんとしている私に、彼はにこりと微笑んだ。
「昨夜の俺と小野坂さんはまるで恋人のように熱く何度も体を重ねたから、恋人っぽい雰囲気が出ていないかなと思って」
「えっ……」
そういえば、隠岐先生とそういうことをしてしまったんだっけ。なるべく考えないよう記憶のすみっこに追いやっていたのに、思い出した途端に恥ずかしさからか頬に熱が集まる。
そんな私の手を隠岐先生がぎゅっと握った。
「とりあえず駅に向かえばいい? 自宅までの案内はよろしく頼む」
「えっ、あの、でも……」
「ほら、行くぞ」
本当にいいのだろうか。
戸惑う私を引っ張りながら隠岐先生はずんずんと進んでいった。