怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~

 昨日はあのあと隠岐先生と一緒に帰宅したのだけれど母の態度は最悪だった。

 私の彼氏だと挨拶した隠岐先生に対して嫌悪感を丸出しにし、言葉にも態度にも棘があった。本当にわかりやすく隠岐先生のことを否定していたのだ。

 母は、私たちの関係を認めようとはせず、別れるよう強く求めてきた。

 もちろん私と隠岐先生は本当に付き合っているわけではないので、別れろと言われたところでダメージは特にない。ただ、昨日の隠岐先生は私の彼氏役に徹していたようで、私との恋人関係を続けたいのだと必死に母を説得してくれた。

 結婚も前提に交際しているので、私にお見合いをさせないでほしいとひたすら母に懇願する隠岐先生の姿に私は思わず胸が痛んだ。

 どうしてそこまでしてくれるのだろう。本当は付き合っていないのに別れたくないと頭を下げる隠岐先生の姿を見るのはつらかったし、優秀な弁護士である彼にこんなことをさせてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 でも、母と対面する前に隠岐先生から言われた言葉を思い出した私はぐっと口を閉じていた。


『俺が必ずなんとかするから、小野坂さんはあまり喋らなくていいよ。お母さんになにか聞かれたら答えてもいいけど、あえて自分からは口を出さないこと。とにかく俺が話を進めるから』

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