怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「でもどうするの? とりあえずお見合いはしなくて済んだけど、優月と隠岐先生は実際には付き合っていないんだから。そんな嘘でいつまでもおばさんのこと騙せないと思うし、バレたときこわいよ」
「それは、そうなんだけど……」
もっともな瑠奈の指摘に私は思わずしゅんと肩を落とす。けれど、実はそれについてもとりあえずは大丈夫そうだ。
「隠岐先生に、あとのことも任せてって言われたの。お母さんのことをこのまま騙し続けられるなにかいい策があるみたい」
「策って?」
「それについてはまた今度教えてもらう予定なんだけど、とにかく大丈夫だって隠岐先生が言ってた」
母の心をがっしりと掴み、私の彼氏として認められた隠岐先生は、一時間ほど私の家に滞在したあと、仕事があるからと颯爽と帰っていった。
土曜日にも相談の依頼が詰まっているなんて、さすが事務所一の稼ぎ頭であるエリート弁護士は多忙のようだ。
そんな忙しい合間を縫って、ただの事務員である私のお見合いというトラブルをすんなりと解決してくれたのだから、隠岐先生には感謝をしないと。
「それにしても隠岐先生は随分と優月に親切だよね。普通は彼氏のふりまでするかな。なにか裏があるとしか思えないんだけど」
瑠奈がテーブルに頬杖をつきながらぼそりと呟く。