怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~


「だって随分と隠岐先生のこと熱く語るから、好きなのかなと思って」


 そう言って、瑠奈がにやりと笑う。そんな彼女に向かって、再び私はぶんぶんと首を大きく横に振った。


「ち、違うよ。隠岐先生のことは好きとかそういうんじゃないの」

「じゃあなに?」

「えっと……私にとって隠岐先生は憧れの弁護士なの」

「憧れ?」

「そう、憧れ。恋愛感情じゃない」

「ふーん、そうなんだ」


 途端に瑠奈はつまらなそうな返事をして、ストローに口をつけた。そのままごくごくとアイスティーを喉に流し込んでいる彼女に、今度は私が質問をする。


「そういえば、瑠奈の方はあれから拓海(たくみ)さんとはどう?」

「あ、優月が隠岐先生とのことはぐらさかそうとしている。あやし~。本当は好きなんでしょ」

「だから、違うってば!」


 すぐに言い返した私を見て、瑠奈が楽しそうに笑っている。


「ま、そういうことにしといてあげようかな」


 そう呟いてから、瑠奈はすっと笑顔を引っ込めた。その表情に途端に影がさす。


「拓海とのことだけど、けっこう最悪な展開を迎えている」

「どういうこと? 瑠奈の勘違いじゃなかったってこと」

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