怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「どう? 小野坂さんにとってもこの結婚はそんなに悪い話でもないだろ。俺も俺でメリットがあるから互いに得がある。つまり、ウィンウィンの関係だ」
「ウィンウィン?」
「恋愛をして結ばれるんじゃなくて、お互いの求める条件がぴったりと合うから結婚をする。そういうのもアリだとは思わない?」
どうなのだろう。アリなのだろうか。
最初に聞いたときは驚いたし、こんな結婚は当然受け入れられないと思ったけど、今はだいぶ気持ちが傾いている。
それに、隠岐先生の言っていた‟策„とはこのことだったのかもしれない。お見合いを断るため私の母の前で彼氏のふりをしてくれた日に、隠岐先生はこのまま母を騙し続けられるいい策があると話していた。それがこの‟結婚„なのだろう。
私は母の束縛から自由になるため。隠岐先生は病気の父を安心させるため。お互いに欲しいのは結婚という事実のみ。私たちの間に愛はないけれど、メリットはある。だとしたら、こういう結婚もアリなのかもしれない……。
「私でよろしければ、お願いします」
気が付くと口からそんな言葉がこぼれていた。
「それは、俺との結婚を承諾してくれるってこと?」
「はい」
柔らかく微笑みながら尋ねた隠岐先生に向かって私はしっかりと頷いた。
「それじゃあ俺たち結婚しようか」