怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
入籍のお祝い



 ***

 ――あれは、私がまだ隠岐総合法律事務所で働き始めて間もない頃。

 すでに弁護士として第一線で活躍していた隠岐先生は、当時世間を大きく騒がせていた収賄事件を取り扱っていた。

 マスコミなどの報道から社会全体が被告人を非難する中、その矛先は被告人の弁護をしている隠岐先生にまで及んだ。彼に向けて嫌がらせの電話やメールなどが事務所にたくさん押し寄せたのだ。

 それでも隠岐先生は毅然とした態度を崩さなかった。

 事務員として働き始めてまだ日の浅かった私は隠岐先生と関わることがあまりなかったものの、世間から注目される大きな裁判において強いバッシングを受けている彼のことが心配だったのは覚えている。

 そんなある日。

 共有スペースの前を通りかかると、ソファに横になっている隠岐先生の姿を見つけた。恐る恐る近付くと、どうやら眠っているようだった。

 背が高いので足が飛び出ているものの気にすることなく隠岐先生はすやすやと寝息をたてている。

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