怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「悠正さんはまだ仕事。今日は少し遅くなるみたい」
そう伝えたとき、今まで和やかに話をしていたは母の空気がピリッと引き締まるような感覚が電話の向こうから伝わってきた。
《悠正さんまだ帰ってこないの? 遅い時間まで優月がひとりぼっちなんて、お母さんとても心配だわ》
もしかして余計なことを言ってしまったのかもしれない。母の心配性に火を付けてしまったらしく、急いでそれを消しにかかる。
「大丈夫だよ、お母さん。このマンションとてもセキュリティがしっかりとしているの。頑丈に守られているから危ないことなんてなにもないから安心して」
《それでも戸締りはきちんとするのよ。窓の鍵もすべて閉めること》
「お母さん。ここ何階だと思っているの。外からなんて誰も入ろうとは思わないよ」
ふと視線を窓の方に向けると、そこには宝石を散りばめたような都心部の夜景が広がっていた。ここに越してきた日の夜に、しばらくうっとりと見惚れてしまったことを思い出す。
そのあとも母と少し話をしてからようやく通話を終えた。