怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
悠正さんは仕事で遅くなるため、ひとり分の食事をダイニングテーブルに並べていると、玄関の扉が開く音が聞こえた。
どうやら悠正さんが帰ってきたらしい。遅くなると言っていたわりに随分と早い帰宅だ。
「おかえりなさい。お疲れさまです」
リビングに入ってきた悠正さんに駆け寄ると「ただいま」と返され、その手が自然と私の頭に触れてくしゃっと優しく髪を撫でられた。ついドキッとしてしまったものの、それを悟られないようなるべく平然を装いながら彼に尋ねる。
「今日は遅くなると言っていましたが早く帰れたんですね」
「ああ。七時から予定していた相談が先方の都合でキャンセルになったんだ。その時間を使って書面を作成してもよかったんだけど、ふと優月の顔が思い浮かんで」
「私の?」
きょとんと首をかしげると、悠正さんがにこりと微笑む。
「早く会いたくなって帰ってきた。はい、これ。お土産」
「えっ」
手に持っていた白い小さな箱を悠正さんが私に手渡す。
「帰りにあのカフェに寄ったら店頭販売しているプリンがまだ残っていたから。優月が昨日食べたいと言っていたのを思い出して」
「プリン……」