怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「命を狙われているってのは冗談。ちょっとからかっただけ」
「えっ、からかう……」
「ごめん」
どうやら命を狙われているというのは嘘らしい。まんまと騙されてしまったようだ。しかも命を狙っている相手を鏑木さんだと思い込んでしまい、なんだか鏑木さんにも悪いことをしてしまった気がする。
「まぁでも完全に嘘というわけでもないかな。このマンションのセキュリティの高さがあれば自分の身は守れそうだから」
「えっ。じゃあやっぱり……」
鏑木さんに命を狙われているのだろうか。と、再び心配な気持ちが募っていく。
「でも、相手は鏑木じゃないからな。あいつとはそこまでこじれてない」
まるで私の考えが伝わったように悠正さんはそう言って笑った。
「今すぐに誰かに命を狙われているわけじゃなくて、俺にはそういう危険もあるってこと」
「どういうことですか?」
すかさずそう尋ねると、悠正さんは少し困ったように口を開く。
「弁護士をしていると人に嫌われることってけっこうあるんだよね」
「嫌われる?」
父の事件のことがあり、私は子供の頃から弁護士をヒーローのような存在だと思っている。でも違うのだろうか。
悠正さんが淡々とした様子で言葉を続けた。