怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~


「例えばとある揉め事を解決する場合。一方からすれば俺たち弁護士は味方だけど、もう一方からはどう思われると思う?」

「え、えっと……」


 突然の質問にとっさに答えを返せないでいると、すぐに悠正さんが続きを口にする。


「全員ってわけじゃないけど、たぶん敵だと認識される。揉め事には双方に言い分があるから、自分が正しいと信じていることを覆す人間をよく思わないのは当然だ。だからもう一方からすれば俺たち弁護士はあまりよく思われない」


 そう説明されてようやく理解ができた。

 弁護士事務所で事務員をして三年になる。日々、弁護士先生たちの仕事の様子を間近で見てサポートしていると、悠正さんのこの言葉の意味を実感することがたまにあった。

 つまり、依頼人のために裁判で勝利したとしても、もう一方の負けた相手側には恨まれてしまうかもしれないということだろう。それと同時に敵を作ってしまう。


「何年か前に離婚案件を扱って、奥さんの代理人を務めたときだったかな。離婚したくない旦那が俺宛てに脅迫のような電話を繰り返してきたり、当時住んでいたマンションまであとをつけて待ち伏せしたりするっていう嫌がらせを受けたことがある」


 そう言って、悠正さんは困ったように笑った。

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