きみと、どこまでも堕ちていきたい
「どう、美味しい?」
私は手にナイフとフォークを持ち、皿に綺麗に盛り付けされた白身魚を切る手を止めて、微笑んだ。
「とても美味しいです」
「それなら良かった」
とてもお洒落で、料理も美味しい。
女性が喜びそうなお店。
さすが二階堂。
「いいお店知ってらっしゃるんですね。奥様ともよく来られるんですか?」
「ああ…まあね」
少し口ごもった。
会社では抵抗なく奥さんの話をするのに。
私と2人だから、あまり話したくないのか。
「俺のお気に入りなんだ、この店。滝川さんも気に入ってくれるかなって」
「もちろん気に入りました。特にこの白身魚、いままで食べたなかで1番美味しいです」
私は魚を口に入れる。
美味しい。これだけは本心。
こいつと一緒じゃなきゃもっと美味しかったんだけれど。