きみと、どこまでも堕ちていきたい
ねえ、何で。お姉ちゃん。
何で、あんな男のために死んだの?
『あの人がいないと、わたし、生きていけない』
以前はあんなに幸せそうに語っていた姉は、2日前、そう呟いて床に座り込み、遠くを見つめたまま涙を流した。
『お姉ちゃんだったら他にいい人見つかるって』
『だめなの!あの人じゃなきゃ…愛してるの』
『だってその人…奥さんがいるんでしょう?』
『でも、私を愛してるって。奥さんと別れて私と一緒になってくれるって言ったの。なのに…』
左手の薬指には、小さなダイヤがついた指輪。
“あの男”からもらったものだった。
それを右手で大事そうに包み込む。
大粒の涙が何度も何度も、手に零れて、伝っていく。
この日、お姉ちゃんは“あの男”に別れを告げられたらしい。
だから、死んじゃったの?
“あの男”は、そこまでして愛する価値のある男だったの?